長幼の礼儀を尊ぶ儒教の国・韓国でも子供による家庭内暴力事件が増えている。
「背倫(倫理に背く)」犯罪といわれる子供の家庭内暴力は、これまで片親家庭にだけ現れる現象とされていたが、最近は普通の中産階級の家庭にまで拡散している。
中小企業の役員である夫と浪人生の息子のいるソウルのある中層家庭の主婦キム・ジョンスク(仮名/49)さんは、3年間に渡って奉天(ボンチョン)洞のある精神科病院でうつ病の治療を受けている。98年から1週間に3〜4回、息子(19)から常習的な暴行を受けたことによって発病した。
「ソウル女性の電話」(会長イ・ムンジャ)には1カ月に3〜4件ずつ「子供から暴行を受けた」という母親からの電話が受け付けられる。警察庁は青少年を含めた全体の尊属暴行と尊属障害事犯は97年にはそれぞれ225件、519件に過ぎなかったが、それ以降は毎年平均20%ずつ増加し、2000年には3年前の2倍に近い519件と821件に急増したと明らかにした。
専門家は、このような両親(主に母親)への暴行は、家長である父親が子供の教育に無関心で、子供の頃から皇太子のように過剰保護を受けて育った青少年に多いと分析した。精神科の専門医、金鉉洙(キム・ヒョンス)博士は「核家族化現象などによって家庭の中で皇太子のように育った青少年が何の罪意識もなしに、主に自分よりも力の弱い母親に暴力を振るう」とし、「過剰保護によって忍耐と節制を習うことがなかったために生じた一種の“衝動調節障害”と見ることができる」と話す。
精神科の専門医、李時炯(イ・シヒョン)博士チームが97年、全国の中高生1200人を対象にアンケート調査をした結果、「両親に暴力を振った経験がある」と答えた青少年は2.6%に過ぎなかったが、99年にソウル大学の消費者児童学科とハン・キョンヘ教授チームが中高生1737人を対象に行った調査ではこの数値が5%に上昇している。
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